麻布(近辺?)な落語








井戸の茶碗(谷町)


麻布茗荷谷(麻布谷町)の裏長屋に住む正直者の屑屋清兵衛が、とある裏長屋の浪人から買った仏像を細川家の高木作左衛門という若侍に売り、高木が仏像を磨いていると....。善人しか登場しない人情話。清兵衛の住まいが麻布谷町で細川家の屋敷が芝白金(現在の高松中学あたり)という設定で、裏長屋の浪人が住んでいたのは十番あたりであろうか。この噺の原型は江戸期、栗原東随舎の随筆「思出草子」の「茶碗屋敷」に細川家足軽の話として掲載されている。内容はこの噺とほぼ同じだが、細川公に献上された茶碗は殿中で、事の由来を聞きつけた田沼意次に所望され貸し出された。しかし田沼はなかなか茶碗を返そうとせず、困り果てた細川家では、ある家老が一計を案じ、その茶碗と引き換えに神田橋にある広大な土地を手に入れる。そして、その屋敷は茶碗屋敷と呼ばれたという。
おかめ団子(飯倉片町)
おかめと言う名の器量よしな娘を持つ団子屋に、太助と言う親孝行な大根屋が団子を求めて来ると.....。
こちらもほのぼのとした話。落ちも好きだ。
この団子屋は文政年間から明治30年まで実在した。創業者は、諏訪治太夫という釣り好きの浪人で ある日品川沖で、耳のある亀を釣った。
亀を持ち帰り、自宅の池で飼う事に。女房は、池のほとりに茶店を出し、 珍しい亀の見物人に”亀団子”と名づけた団子を売ると、これが大繁盛。
二代目の女房は、”おかめ”に似ていたので”お”を付けておかめ団子とした。おかめ団子は江戸の評判となり川柳にも「鶴は餅、亀は団子で名が高し」と読まれ、また、東京のわらべ歌にも「お尻の用心小用心、今日は二十八日、明日はお亀の団子の日」とある。そしてお亀団子は次項「黄金餅」の話の中にも登場する。
黄金餅(絶江坂)
下谷山崎町の裏長屋に住む金山寺味噌売りの金兵衛は、このごろ隣の住人願人坊主西念の具合が良くないので、なにかと世話を焼いている。 ある日、あんころ餅が食べたいと言い出した西念に、餅を買ってきてあげると....。
何と言ってもこの話のメインは、死んだ西念を漬物樽に詰めて、下谷から麻布絶江釜無村の木蓮寺まで運ぶくだり。麻布内を飯倉片町〜お亀団子〜永坂〜麻布十番〜大黒坂〜一本松〜絶江釜無村とたどる。木蓮寺は、架空の寺だが、落語では、荒れ寺の象徴らしく「悋気の火の玉」にも谷中木蓮寺として登場。また麻布絶江釜無村は実在の地名で後に釜無横丁と呼ばれ、現在の南麻布の一角にあった。話の最後に取り出した金で、目黒に餅屋を開いたとされる話は実話だと言われる。 悪銭が身に付いた?珍しい話で、”落ち”は無い。
小言幸兵衛(古川町)
麻布古川町の大家、幸兵衛はいつも長屋を回り小言を言い歩く。次々と店を借りに来る人達にむかい小言ばかり.....。 町の職業が手に取るようにわかる話。落ちは、鉄砲鍛冶、花火職人など演者により変わる。
この時代の大家は、地主に委託された管理人が多かったが、町役人も兼ねていたので絶大な権限を持っていた。
首提灯(芝内山)
追いはぎや辻斬りが横行していた幕末の増上寺裏手。一杯ひっかけ千鳥足で品川の遊郭にむかう町人。突然暗闇から田舎侍に声をかけられると.....。 今の、東京タワ−のあたりだろうか。ここは、新橋方面から品川遊郭への近道であったが、幕末には、実際に辻斬りが盛んだったらしい。話は、SFチックで今の人にもなじみやすい。 私が聞いたのは、小さんの話で、まくらには胴切りにあった町人が、上半身は風呂屋の番台に、下半身は、こんにゃく屋に奉公する。
お祭り佐七(芝神明)
久留米藩士、飯島佐七郎は腕が立って男前。女達が放っておかない。しかしそれがアダで浪人になり、め組の頭清五郎の家にころがりこんだ。
お祭り佐七が鳶になるまでの話。なぜ”お祭り”なのか小さんは、木遣りがうまく方々の祭りに招かれたからだと。
芝浜(芝金杉)
芝金杉に住む魚屋勝五郎は、腕も人間も良いが、大酒のみの怠け者。質入れしてまで酒を飲む。ある年の瀬、業を煮やしたおかみさんに起こされしぶしぶ河岸へと向かうが.....。 この話を、一度も聞いた事が無い人はいないだろう。ここで言う河岸とは、金杉浜町の雑魚場。幕末に”芝浜”、”財布”、”酔っ払い”の三題話として三遊亭円朝がまとめた。
居残り佐平次(品川)
良からぬ仲間が集まって、品川遊郭で大見世遊びをしようとしたが、みんな金が無い。そこで兄貴分の佐平次は俺に任せろと.....。 当時の遊郭”相模屋”は、実在する品川でも一二を争う大見世。金が無いので人質に居残った佐平次の胸のすくような?活躍。 ちなみに”佐平次”とは、浄瑠璃や落語で図々しい人、良く喋る人の隠語との事。
かわらけ町(土器町)
これは落語ではなく艶笑小噺だが江戸時代に飯倉四ッ辻辺にあった地名、土器町(かわらけまち)にちなんで三遊亭圓生が創作し、噺の枕に使われた4分ほどの小噺。訳はチョッと書けません。悪しからず!